クラウドコンピューティングについて思う事(1)の続きです。前回は、クラウドの概要について思うところを書きました。今回は、その利用シーンに迫ってみたいと思います。
クラウドの利用者は消費者と生産業(B2B)の両方があります。今回はB2B方面に絞って書いてみたいと思います。
クラウドを企業に導入すると、様々なメリットがあると言われています。クラウドの面白いのは、定義こそ共通のものが無いにも関わらず、メリットは割と皆さん共通の思いがあるようです。例えば、
1. 初期コストと構築にかかる時間と費用を圧縮可能で、新事業への取りかかりを加速できる。
2. ソフトのライセンスが不要で、利用料のみで使える。そのため資産を減らす事ができる。
3. キャンペーンのような突発的にサーバリソースが必要な時に、一時的に拡張できる。
4. やり方によってはデータ共有が可能であり、買収、提携時にシステムの統合/共有が容易になる。
などがあげられます。つまり、ある程度の最大公約的に必要な要素はクラウドが所有し、それを利用量ベースで借りる事ができると。それによって、これまでITシステムとして企業が保有していた資産(固定費)を経費(変動費)につけ直す事ができます。もちろん、ある程度運用のリスクとコストを減らす事も可能ですね。
さて、事業の仕組みにITが深く取り込まれている事を考えると、これは誰にメリットがあるのでしょうか?
まず第一に、固定費を圧縮し変動費化するため、値引きのプレッシャーが大きくなります。固定費の圧縮により大量生産によるメリットを生かす機会が減り、変動費勝負になってきます。その変動費においては、経験曲線的に生産量が増えれば、モノ単位のコストは下がる(同じものをたくさん作るため、生産のための学習効果が高くなり、単位生産あたりのコストが下がる)はずです。各社が同程度の生産だけ行っていれば良いのですが、そうは行きません。生産量が多い企業がコスト的優位を持ち、それに追従する企業も合わせて値下げしてくる。というわけです。
そして第二に、固定費が圧縮されるため、その産業への新規参入が容易になります。これまでは、例えばコンビニだったらリアルタイムで売上をモニタリングし、必要物資を即座に配送する事によって競争力を高めてきています。この背景にあるのがPOSでありITシステムです。この構築に多くの投資がなされているはずですね。これが(すべてじゃないにしろ)クラウドで実現できれば、固定費は変動費化されます。同時に、初期投資と構築にかかる時間が短縮されるため、魅力的な市場であればあるほど、新規参入が増えます。それによって、その産業そのものは競争が激しくなるはずです。
こうして考えると、ポーターが自身のファイブ・フォースモデルを使ってインターネットが産業に導入される事による産業構造の影響を行った結果と極めて類似してきます。(著書は「競争の戦略」)つまり、クラウドをある産業が導入する事によって、あらたな新規参入やサービスの脅威を生み出すわけで、産業内の競争が激化し、産業構造としての魅力を下げてしまいます。
もちろん、産業のトップである企業は、このクラウドを全てに完全に導入するとは思えません。ですので、クラウドは産業の中位もしくは新規参入を試みている企業が対象になるのでしょうか。
とは言ってみても、社内のメールやスケジュール管理、出張/経費などの承認といった、企業の競争の源泉の中核とならないITシステムへのクラウド導入はもちろんありうるでしょう。でも、これだと、消費者系のクラウドと極めて類似してきますね。
インターネットの導入で様々なベンチャーが育ったのと同様に、クラウドを利用してあらたなベンチャーが産まれてくるのは非常に好感がもてそうです。
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